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2011年09月 アーカイブ

リアルな車選びをする現代

「こいつを買えば、オレにはこんなステージが待っている」といったイメージを、現実感を添えてハッキリさせるということです。


例えば、艶然と微笑むイブニング・ドレス姿の母親らしき女性と、タキシードで身を固めバイオリンを抱いた子供がコマーシャル・バンを飾り立てただけの1ボックス・ワゴンの対向シートに向かい合って座っている・・・


この種のカタログはいまだによく見かけますが、まるで掘っ立て小屋の中でフランス料理を食うといったような・・・


あまりにも現実感に乏しい、貧しさ剥き出しのメンタリティから生まれたクルマは、今後はきっと見向きされなくなるだろうということです。


中古車情報が多いことや夢を見せることは大事ですが、それが見果てぬ夢でもなく、馬鹿げた夢でもなく、


「ああそうか。こいつと付き合えば、こんな感じになるんだな!」


・・・といった、現実感の上に立った夢を見せることが必要だと私は考えているのです。


たとえば小型4ドア・セダンについて考えてみましょう。


小型4ドア・セダンといえば、手頃な価格で買えて、低いランニング・コストで維持できて、4人が狭苦しさを感じずに座れるキャビンをもち、誰にでも運転しやすくて、そこそこの性能と快適性を発揮する・・・


そんな内容を、スタイリッシュで立派に見えながらも決して前に進みすぎてはいないデザインで包み込むといったところが基本的な骨格になっていたはずです。


その骨格の上に、"個性"という名のほんの小さな飾り枠をはめれば「出来上がり」でした。

想像力をかきたてられる車

トヨタのような強大なメーカーが"世界のマス・マーケット"を対象に作り出す小型4ドア・セダンという条件下であれば、こうした既成の価値観が今後とも力をもち続けることはむろんありえます。


・・・しかし、商品そのものの魅力で売ってゆかなくてはならないメーカーのクルマということになると、そうはいきません。


例え小型4ドア・セダンという平凡なカテゴリーのクルマではあっても、高いインテリジェンスを感じさせるとか、高級車にも比肩しうる質の高さをもっているとか、ひたすらシンプルでありジーンズだけで過ごすようなライフ・スタイルにピッタリであるとか、すべての機能が熟年ユーザーに優しく仕立てられている・・・


・・・といったように際立った特徴をもち、ユーザーが中古車情報やクルマを見たとき、


「こいつを買えば、こんな時間が過ごせる」、「こいつと付き合えば、オレはこんなステージに立てる」、「こいつは、年寄りをとても大事にしている」


・・・といった現実的なイメージが浮かび上がってくるようなクルマであることが必要だということです。


これは、トヨタのような強大なメーカーのクルマであっても、マス.マーケットを相手にするクルマ以外には当てはまることだと思います。


とにかく今後、開発者たちは、ユーザーの現実的思考回路と夢想的思考回路の両方を共に細部までしっかりと検討し、どういうユーザーにどういうクルマをどういう形で提供すれば、どういう満足が提供できるのかということを、ハードウェアとソフトウェアの両面から可能な限り具体的に整理。


その上で「こうするべき」という結論を計画書の上に明記するべきです。


そういう意味では、開発担当技術者は宣伝分野にまで深く立ち入るべきですし、宣伝担当者も開発現場に深く立ち入るべきでしょう。

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